はじめに

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              『ムビラ修行を終えて』

 3ヶ月間、ジンバブエの首都ハラレに滞在し、主にムビラ修行をしてきました。
 週3日以上はルケン・パシパミレ先生の自宅に通いムビラのレッスン。先生からはンゴマ(太鼓)、歌、ホーショウ(シェーカー)も習いました。そして、週一回ムビラメーカーのジョナの姉チポに歌を習い、週一回ムビラメーカーのアドマイヤーの妻シーラからダンスを習いました。ニュンガニュンガというムビラの一種も少々。
 こうやってムビラ音楽を囲む数々の要素を習うと、一つ一つが長い伝統を持ち、影響しあってひとつの深い世界を作っていることを感じます。
 ムビラの曲も、パシパミレ先生は「チャムテングレは楽しい曲だけどスピリット(祖先の魂)は来ないよ」といいます。ムビラの曲もムビラ弾き(グエニャムビラ)の実力も、スピリットを呼べるかどうかが重要なようです。伝統曲とその奏法を大切にするように先生が言うのも、そこにスピリットを呼ぶ力があるからなのだと、先生の熟練した思いを込めた演奏に実感しました。
 歌の内容は、ほとんどが草原の村で暮らしている人々の生活の様子や、祖先の魂に生活を守ってほしい、救ってほしいと頼む内容でした。自然の力の前で懸命に生きる人々の生活を感じます。歌もムビラと同様、クシャウラとクチニラのパートを持っていました。そして、それを掛け合い咬み合っていく面白さを感じました。節回し、音程の上げ下げ、舌を振るわせる強くなどの発音、細かい注意を受けながらムビラを弾いて歌うということに苦戦していました。
 ダンスもムビラにはこのスッテプ、ンゴマの曲にはこのスッテプなど決まりを持っていました。基本的にはホーショウのビート通りステップを踏むのですが、これが少しでもずれると注意を受けました。ビートを間髪いれづ踏んでいく、音を良く聞き体全体でビートを感じたダンスでした。そしてムビラのダンスだけあって、ムビラ曲の基本が16回のホーショウで出来ているので、ひとつのステップを8回か16回のホーショウに合わせて終わるようになっていました。
 ホーショウもただリズムがあっているだけでは、合格点はもらえませんでした。先生は、音を良く聞き完成された音になるまで、何度も繰り返しました。筋肉痛になるまで良く振りました。
 ンゴマ(太鼓)もンゴマの曲と歌があります。マンデというンゴマの曲をならった後、ジンバブエの有名なムビラグループ、マウンギラ・ナリラが同じ曲を歌い、共に歌えたときは感動しました。ンゴマにもクシャウラとクチニラの叩き方と歌があって、2台以上で合奏し歌いあうことをします。
 習ったものすべて、先生達が合格点をくれたときは自分が真似をしていたときとは違った美しい、別世界を持っていました。一つ一つのムビラ音楽を構成する要素は、長い歴史の中で熟成され、深く素晴らしい世界を築いてきたのだと感じ、なんて自分は素晴らしい、そして遥かな道をもったものに出会ってしまったのだろうと、道の遠さにため息さえ出ました。
 パシパミレ先生は私に言いました。
「エリカ、たくさんの曲、たくさんのバーションを知ることはない。祖先の魂を呼ぶ儀式では一晩で5、6曲しか演奏できないのだから。基本的な曲を長く、確実に弾けるようになりなさい。いつも身近にムビラを置いて、けしてムビラをやめてはいけないよ。」
 焦ってはいけない、この道は長いのだから。
 教わったことを大切に、ゆっくりと自分の中で熟成させて、そしてまた再びあの素晴らしい文化を引き継ぐ人々の中に混じれる日を願って、今日もムビラを弾いていこうと思うのでした。
         


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