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              『ジンバブエに帰る』

 
ジンバブエに3年ぶりに行くことになりました。
 3年前、ジンバブエを怪我をして去り私の長旅も終わったとき、再びジンバブエやアフリカの地に立つことはできないだろうと思いました。
 しかし、時を経て体は回復し、昨年春、ガーナに行くことが出来ました。旅が終わってもアフリカが与えてくれたメッセージを忘れられずに過ごしてきましたが、ガーナの大地をプジョータクシーで移動中、この空、大地、人々、音楽、この感覚から離れることはもう私には出来ない、アフリカと共に生きていきたい、そう再認識させられました。
 今までも、ジンバブエ、ショナ族のムビラという民族楽器を弾いてきましたが、アフリカの空気を再び吸ってガーナの旅から帰り、ムビラをもとにアフリカの持つ尊さを伝えていくことが、アフリカに惹きつけられ大きな感動を与えられてきた自分の使命だと感じられるようになりました。
 ムビラは、その音自体も大変美しいです。しかし、最大の魅力は合奏の形態です。クシャウラとクチニラといわれる二つのパートを合奏してひとつの曲とします。単純な主題をかすかに変化させ、短い曲のその繰り返しによる構造を持ちます。その高度なあわせ方を知ったのは帰国後で、スコアーも論理的説明も知らないジンバブエ人がいとも簡単に演奏し、リズムを刻むのに包まれながら、その仕組みがどうなっているのか分からないままジンバブエの地を離れてしまいました。帰国後、論理的に解説され、自分が理解したとき、なんて複雑で高度な音楽体系を作り上げたのだろうと、ショナ族の歴史を尊敬しました。
 ムビラは、先祖崇拝の儀式に用いられ、先祖の魂がムビラの音によって霊媒師に降りてきて、人々にメッセージを与えます。そういった儀式に参加したときも、何をしているのかさっぱり分かりませんでした。でも、ムビラの音楽の中に一晩包まれ、人々と踊り、トランス状態になった霊媒師の深い目に見つめられ神々しい声を聞き、同じ食べ物を分け与えられたとき、このショナ族の精神性に引き込まれました。帰国後、文献などで知識を後付けしたとき、かつて日本が持っていた先祖崇拝、アミニズムと共通する点が多く、共感を強くしました。
 知識も理由もなく、強くその音楽性、空気自体が輝きを持ち自分を引き込んだことに、ムビラとその文化がもつ普遍的な力を信じます。ムビラの楽器としてのシンプルさ、曲の短さと単純さ。真に美しく価値を持つものは、言葉は要らず、シンプルなものなのではないでしょうか。
 アフリカの旅も、小さなガイドブックに書かれた数ページの情報のみで飛び込み、どの大陸より自分を包んでくれました。アフリカの持つ人々の暮らしのシンプルさ、楽天的単純な人間性。人類が普遍的に大切にしてきた感覚をいまだに維持しています。
 アフリカもムビラも、知識も理由もなく私自身を引き込んだという経験が、アフリカとともに生きることに価値を感じる自分の確信になっています。
 知識を得て、時間を経た私に、ジンバブエはどんな姿を見せてくれるのでしょうか。              


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