はじめに

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                  『It's nature』

 ガーナの西の端、コートジボアー国境近くの500人くらいの小さな村にンズレゾを訪れた時のことです。
 湿地が続く浅い湖を、ボートで1時間近く行った湖の中に浮かぶ小さな村でした。16世紀ころ、今のマリから戦争を避けて、平和を求めて湖に村を作ったと話してくれました。その面白い立地から、ツーリストは数人訪れましたが、滞在していたのは私だけでした。
もちろん電気はなく、炭をおこし煮炊きをし、水はすべて湖から汲んで来ていました。飲用水も、湖の水ですが、病気にもならないようですから清潔なのでしょう。でも、その水は茶色濁っていてとても不思議でした。「どうして茶色なの」という私の質問に、村民はただ「It's nature」と答えたのです。それがここの自然なのだと。理由などないのだと。
 ンズレゾは、かなり自給自足に近い生活をしています。湿地に生えるラフィアと呼ばれるヤシの一種で家を作り、カーペットを作り、酒も作り、魚を捕り、芋を育てていました。ジャングルの中、仲間に居場所を知らせるのも「キーキー、ホーホー」と叫んでいました。与えられた肉体を存分に使っている逞しさがありました。
 そんな彼らはよく飲み、よく食べ、新陳代謝が違うのかよく汗をかいていました。親切なので同じ量の食べ物をくれますが、私は残してしまい彼らを心配させます。体の作りが日本人とは違うのだと思います。彼らの肌は黒いです。私の白い肌を子供達は触りたがりますし、赤ちゃんは私を見て驚いて泣いてしまう子もいました。肌の色も、体のつくりも、それが彼らでありそれが自然なのでしょう。
 旅をしていて、自分の生活、文化との違いに驚き、対応できないこともあります。でも、アフリカを知れば知るほど、良い悪いもなくそれが彼らでありそれが自然なのだと当然と受け止められるようになりました。そして、すべては楽に成りました。
 「It's nature」自然がそのように作ったのですから、自然が作ったものは人も文化も環境も、色々あってすべてはそのままで良いのだと、尊く思えるのです。


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