はじめに

最新号

「食べ物との会話」

私は、以前より野菜中心の食生活を好んでいます。健康のためではなく、その方が気分が良いことに気付いたのです。時々、肉を食べると体が熱くなり、心もやや落ち着きをなくします。
  アジアを旅していた頃、羊肉の食生活が続き、羊臭い自分がいて、自分の中に羊がいることを意識してしまいました。アフリカでは、トウモロコシの粉を練った主食に牛やヤギの肉のシチューが多く、野菜も瑞々しく、自分の体も肥えていたし、活力があったように思います。アフリカ人の肉体美と弾けるような性格が分かるように思いました。
  食べ物は、ただ単に肉体の細胞間のエネルギー交換ではなく、精神上のエネルギー交換でもあるように思うのです。私は、持って生まれたあるがままの自分であるような、自然に準じた生き方をしていきたいと思います。だから、食べ物は旬のもの、輸送距離の少ない新鮮なもの、科学的な加工が少ないものを選ぶようにしています。しかし、今日の日本では、厳密にこれを実行しようとすると、輸入品の値の安さと国内産の品数の少なさに困難さを感じてしまいます。
  世界各地を訪ねると、それぞれの国で国民性がありますね。自然環境や歴史等、影響因子は色々でしょうが、その地の食べ物がその地の人の性格に関わっているのでしょう。私は旅した時、その地の庶民の食生活に近いものを、食べることを好んでいます。旅の面白さは、その地の文化を体感できることです。その地を食べ物とともに体に入れ、自分の体の中でその地を感じたいのです。異文化を受け入れられなくて、消化不良の時もあるし、自分の精神状態の変化に驚くこともある。
  食べ物を味付けの関心だけでなく、その食材が持つエネルギーと自分の精神との結びつきを意識し始めてから、食べ物と自分の会話があるように感じて、暖かい気持ちになりました。



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